御影石の床に朝日が差し込む、とある大名の屋敷。このお家の主役は、それはもう見事なツンデレっぷりを発揮するちっちゃな殿様、子猫のちくわであった。お名前は「ちくわ」。
ある日、しもべがハァハァ息を切らして持ってきたのは、これまで見たこともないくらい大きなお城…じゃない、物体。それは、ダンボールでできたキャットタワーだったんだニャ。
ちくわは、「フンッ!」って鼻を鳴らして、ちらっとも見ないでプイッと横を向いた。「ダンボールなんかで、ニャンだかニャンダカ。そんな安っぽいお城に、このちくわ様が興味を持つと思ったのかニャ?」まだ、赤ちゃんみたいな声が可愛いんだニャ。
しもべは、ちくわのツンツン態度にも負けずに、タワーの一番てっぺんに、マタタビをこすりつけたおもちゃをぶら下げたんだニャ。するとどうだニャ?ちくわの大きなお目々が、ちょっとだけ、そのおもちゃに吸い寄せられたではないかニャ!
それでも、ちくわは「別にっ!」って感じで、クールな顔を装った。「フンッ、そんな誘い文句に、このちくわ様が釣られるわけないニャ!」
でも、ニャンだか、心の中のウズウズには勝てないものだニャ。短いしっぽの先がピクリと動いて、やがて、もじもじしながらダンボールタワーに近づいていくんだニャ。そして、誰にも気づかれないように、そーっとちっちゃな前足を乗せたんだニャ。
グラリ、ってほんの少しダンボールが揺れたニャ。ちくわは「ハッ!」って顔を上げて、ニャンでもなかったかのように澄まし顔でその場を離れたんだニャ。
しもべは、そんなちくわの様子を、部屋の隅からそーっと見ていたんだニャ。
ちくわ様のお気に入りニャ!
夜になって、お屋敷がシーンと静まり返ると、ちくわはまたダンボールタワーのところへ行ったんだニャ。今度は、もう迷うことなく一番下の穴にズンズン入って、ガリガリと爪を研ぎ始めたニャ。そして、満足そうに天井を見上げると、次の段へ軽やかにジャンプしたんだニャ!
「ニャーン、ニャオニャオニャ!」ちくわは興奮して鳴いたんだニャ。「この三つの台座、なかなかやるじゃないかニャ!そして、ニャンと言ってもこのてっぺん!なんと170cmもあるじゃないかニャ!ここからならお部屋中がぜーんぶ見えるんだニャ、まさにちくわ様のお城だニャ!」まだちょっと、舌が回ってない鳴き声が、楽しそうに響くんだニャ。
フッと、一番下の台座の影を見ると、ちっちゃなネズミのおもちゃが隠れてるニャ。「ニャッ!これはウレしいニャ!台座の下にはネズミのおもちゃもあるじゃないかニャ!しもべめ、なかなか気が利くニャ!」
ちくわは、クルッと体をひっくり返して、壁についてる透明な板をジッと見たニャ。「それにしてもこの板…ニャー!ニャンて面白いんだニャ!猫の肉球が見放題、魅力的な窓付き板セットとかいうのも選べるんだニャ。これつけたら、ちくわ様の可愛いピンクの肉球が、しもべどもに丸見えになっちゃうんだニャ!普段は見せないちくわ様の、とーっても貴重な姿を拝めちゃうってわけだニャ。フフフ……」
タワーのあっちこっちを探検しながら、ちくわはゴロゴロと喉を鳴らしたんだニャ。「うむ、なかなか快適なお家だニャ。それに、その他オプションパーツもたくさんあるとかニャ。このちくわ様のために、まだまだどんどん進化させられるってことかニャ……しもべめ、期待してるんだニャ!」
一番上の展望台にたどり着いたちくわは、ちっちゃく「ニャア」って一声鳴いたんだニャ。それは、昼間のツンツンした態度とは全然違う、甘えたような鳴き声だったニャ。
ちくわ様のイタズラ計画ニャ!
ちくわは、その場から部屋中を見渡しながら、小さくニヤリと笑ったニャ。この高い場所からなら、しもべがいつも大事にしている、きらきら光る飾り物も、手が届きそうだニャ。そして、その横にある、ひらひら揺れる掛け軸も、爪でカリカリしたら、きっと面白い音がするに違いないニャ!
「ニャッ!そうだニャ!明日は、あのきらきら光るやつで遊んでやるニャ!そして、あのひらひらするのも、きっといい爪とぎになるニャ!しもべが困る顔を見るのが、今から楽しみだニャ!」
ちくわは、ゴロゴロと喉を鳴らしながら、新しいお城でどんなイタズラを仕掛けようか、ワクワクしながら考えたんだニャ。
ちくわ様のヒミツの喜びニャ!
次の日の朝、しもべが見たものは、ダンボールタワーのてっぺんで、気持ちよさそうに丸まって眠るちくわの姿だったニャ。その寝顔は、いつものツンデレなお殿様とはぜんぜん違う、すっごく無邪気なちっちゃな子猫みたいだったニャ。
ちくわは、しもべが近づくと、のそのそと目を覚ましたニャ。そして、しもべの顔を見ると、また「フンッ!」って鼻を鳴らして、プイッと横を向いたんだニャ。「ダンボールなんかで、寝心地が良かったニャンて、口が裂けても言わないニャ!」
でも、その短いお耳は、ちょっとだけ、しもべの方を向いていたんだニャ。そして、その瞳の奥には、新たなイタズラの光がキラリと輝いていたんだニャ。
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