第1話『夜中に光る、あのベランダ。』
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うちは社宅歴30年、小川さと子、61歳。
この社宅で火事も出産も不倫も見てきたけどな、
あん時ほど「なんやこれ…」ってなった夜は、そうないで。
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ことの発端は、3日前の夜。
うちは玄関で猫のエサ置き場を拭いとったんよ。
そしたら、ふと視界の端にチカッと光るもんがあった。
見たら、302号室のベランダがチカチカ光っとる。
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「……なんやろ、あれ」
隣の川上さんも洗濯物取り込みながら、こっち見て言う。
「ドローンのライトちゃう？」
「宇宙信号？」
「いや、防犯カメラの誤作動ちゃう？」
うちは気になって寝られへんようになってもうた。
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翌日も、夜になるとチカチカ。
次の日もチカチカ。
しかも決まって午前2時ごろ。
さすがに社宅の主としてほっとけへん。
うちは302号室の若奥さま、吉岡さんに声かけたんよ。
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「なあなあ吉岡さん、夜中な、ベランダのとこ……あれ、なんかのおまじないか？」
吉岡さんは、ぽかんとしてから、はにかんだ顔で言うた。
「……あれ、ランタンなんです。
夜、地震が来るかもしれないから、ちゃんと光るか毎晩チェックしてて……」
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そんとき、うちは正直、心の中で土下座したわ。
「怪しい」とか「カルトちゃうん」なんて思ってた自分を、
今すぐベランダに吊したろか思った。
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それからや。
うち、吉岡さんに言うてもうた。
「それ、うちも買うわ」
「Amazonか？」
「楽天か？」
「どこでもええわ、教えて！」
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吉岡さんが教えてくれたのが、
人感センサー付きのLEDランタン（充電式）。
軽い・明るい・自動点灯で、もし夜に停電しても大丈夫。
ソーラーかUSBでチャージできるから、モバイルバッテリーでもOKやって。
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「さと子さん、防災意識高いって聞いてたから、きっと笑われると思ってて……」
吉岡さんが言うたとき、うちは返したったんよ。
「何言うてんの。
この社宅で一番防災に真剣なん、あんたかもしれへんわ」
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📍今夜も、あのベランダがほのかに光ってる。
それは、防災と優しさの灯やで。
そして、うちはただ見とっただけやけどな。
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🔦登場アイテム紹介
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