2025年7月4日金曜日

週刊連載土曜日編 『モテない私の逆襲』第1話

 第1話:部長、デート前に香水を買う。人生初。




---


キャラクター


原田 真二(44)

IT企業の部長。仕事はできるが、会話はできない。独身。コミュ症。加齢臭の自覚あり。


日野 美穂(44)

同じ会社の総務課。20代の頃からの同僚。結婚願望強め。最近、お見合い6連敗中。

---


本編


「部長って、なんか……いつも無臭ですよね」


その言葉を放ったのは、総務課の日野さんだった。昼休み、給湯室。お湯を注ぎすぎてカップラーメンが浸水してしまったそのときの会話である。


俺、原田真二、44歳。IT企業で部長をしているが、女子との雑談レベルは中2で止まっている。

それでもなぜか最近、日野さんと話す機会が増えている。


無臭——。それは褒め言葉なのか、加齢臭を気にした発言なのか。


その夜。俺はネットで「男 香水 おすすめ 40代 加齢臭 モテたい」と検索していた。

---


「これが……“モテ香水”…?」


届いた香水は、白いボトルに金色のキャップ。

レビューに「これつけたら彼氏できました♡」と書いてある。関係ないけど希望が湧いた。


問題は、どうやってつけるかだ。初めてすぎて分からない。

YouTubeで「香水 つけ方 初心者 男性」と検索。結果、耳の裏に1プッシュと学習。


翌朝——。俺は出社前に耳の裏にそっと香水をつけた。

鏡の前で自分に言い聞かせる。


「落ち着け…これは“自信”の匂いだ」

---


出社すると、日野さんが俺に近づいてきた。

ちょっと香りが強すぎたかもしれない。不安になった。


「……あれ? 部長、今日なんか……いい匂いしますね」


その一言に、俺はたぶん人生で初めて、心の中でガッツポーズをした。


だが、次の瞬間。


「ていうか……加齢臭とローズ混ざってる感じ? なんか、お線香?」

……


この瞬間、俺の中で何かが弾けた。


もういい。逆襲してやる。全員に。モテない人生に。

この香水で、俺は変わる。


たぶん。




---


(第1話終了)

▶次回:「加齢臭とローズの狭間で」——部長、香りに悩む。




0 件のコメント:

コメントを投稿

🪔 「香りが夢を変え、夢が現実を変えた。」

  こんにちは、GOMEZです。 当ブログではアフィリエイト広告を利用しております。 神に選ばれし香りたち ― エジプト香油と、妄想の扉 もし、あなたの心の奥に“呼ばれている”声があるなら、それはもう始まっているのかもしれません。 神々の名を冠...